命に関わる病気ではありませんが、激しい痛みや顔の引きつりによって、人前に出ることに抵抗を感じたり、食事が楽しめなくなったりと、「生活の質(QOL)」を著しく損なう病気です。 当科では、お薬やボトックス注射といった保存的治療から、根治(完全に治すこと)を目指す外科手術まで、専門的な治療を積極的に行っています。
① 三叉神経痛(さんさしんけいつう)
〜「顔面の雷撃痛」は、治せる病気です 〜
- 症状 顔の片側(特に頬やあご、唇のあたり)に、突然「電気が走るような」「突き刺されるような」激しい痛みが走ります。歯磨き、洗顔、食事、会話、あるいは冷たい風に当たっただけで激痛が走るのが特徴です。
- 原因 脳の奥(脳幹)から出ている「三叉神経(感覚を伝える神経)」が、加齢によって曲がりくねった血管に圧迫されることで、神経が過敏になり痛みを引き起こしています。
- 治療の選択肢
- 薬物療法(テグレトールなど): まずは特効薬である抗てんかん薬を試します。
- 神経ブロック・ガンマナイフ: 薬が効かない、副作用が強い、手術ができない場合などの選択肢です。
- 微小血管減圧術(MVD): 唯一の「根治的治療」です。血管による圧迫を物理的に解除します。
② 片側顔面けいれん
〜 自分の意思とは無関係に、顔がピクつく 〜
- 症状 片方の目の周りがピクピクすることから始まり、徐々に頬、口元へと広がります。 進行すると、目がふさがって見えにくくなったり、寝ている間もけいれんが続くようになります。対人関係に悩み、外出を控えてしまう方も少なくありません。
- 原因 三叉神経痛と同様に、脳の奥で「顔面神経(顔を動かす神経)」が血管に圧迫されることが原因です。
- 治療の選択肢
- ボトックス注射: けいれんしている筋肉に薬を注射し、動きを止めます。効果は数ヶ月で切れるため、定期的な通院が必要です。
- 微小血管減圧術(MVD): 圧迫している血管を離すことで、けいれんそのものを止める(根治する)手術です。
③ 舌咽神経痛(ぜついんしんけいつう)
〜 「飲み込む時の激痛」は、手術で治る可能性があります 〜
- 症状 つばや食べ物を「飲み込む」、あるいは「あくびをする」といった動作の瞬間に、喉の奥や舌の付け根、耳の奥に「突き刺すような」「電気が走るような」激しい痛みが走ります。 食事への恐怖から、体重が減少してしまう方もいらっしゃいます。
- 原因 三叉神経痛などと同様、脳の奥で「舌咽神経(喉や舌の感覚を伝える神経)」が血管に圧迫されることが原因です。
- 治療の選択肢
- 薬物療法(テグレトールなど): まずは抗てんかん薬による痛みのコントロールを試みます。
- 微小血管減圧術(MVD): 薬が効かない、副作用が強い場合の根治的治療です。神経を圧迫している血管を移動させます。
■ 手術療法:微小血管減圧術(MVD)について
〜 熟練の技術と最新のモニタリングで、安全な根治を目指す 〜 当科では、薬物治療・ボトックスなども行いますが、根治を目指し微小血管減圧術(MVD)を推奨しています。
- 手術の方法 耳の後ろの髪の毛が生えている部分を小さく切開し、頭の骨に500円玉くらいの穴を開けます。顕微鏡を使って、神経を圧迫している血管を慎重に剥がし、再び当たらないように医療用の繊維(テフロン)などを用いて固定・移動を行います。移動・固定が困難な場合は、神経と血管の間に繊維などを挟む処置を行う場合もあります。
- 安全性へのこだわり(神経モニタリング) この手術で最も大切なのは、聴力(聴神経)や顔の動き(顔面神経)を損なわないことです。 当科では手術中、聴性脳幹反応(ABR)や顔面神経モニタリングといった電気生理学的検査を常時行い、神経の機能をリアルタイムで確認しながら操作を進めることで、合併症のリスクを最小限に抑えています。





